看護師が認知症患者に接する際に、最も多いトラブルが罵声や暴力行為である。認知症患者は自身の病状を理解していないことが多く、自分が病院にいることもわかっていないことがある。自宅に帰ろうとするあまり、制止する医師や看護師に対して力任せに抵抗するケースは決して珍しいことではない。また、認知症になると幻覚や幻聴が現れたり、被害妄想を抱くこともあるようだ。「大切な物を盗まれた」「誰かが自分の悪口を行っている」などと一方的に思い込み、周りの人を罵倒するケースも少なくない。
しかも、認知症患者は加減をせずに力任せで手足を振り回すので、打撲や骨折などの怪我を負ってしまう可能性もある。認知症患者の多くは高齢者であり、怪我を負うと治るのに時間がかかるし、安静にしてくれないことも多いので、感情の抑揚がきかなくなった患者に接するときは、怪我を負わせないように最新の注意を払う必要がある。
そして、認知症患者を看護する場合は、一人で対処せず、複数人で臨むことである。認知症患者の力任せな遠慮のない抵抗は、例え屈強な人でも弾き飛ばされることがある。そのため、一人で興奮状態にある患者に接するのは危険だ。常に数人で対応する必要はないかもしれないが、ケースバイケースで臨機応変に接するようにしてほしい。そして、患者も看護師も怪我のリスクを減らし、安全なケアを行うためにも、日々の様子を細かく観察し、小さな気付きはスタッフみんな共有するようにしてほしい。